英語は難しくない!大人のための最短英語学習法

忙しい大人のための効率的な英語学習法について書いていきます。

手を動かして文字を書くことは外国を修得するときには大切な作業だ!その理由は?

シュリーマンの語学的実績で特筆すべきなのは、彼のペンが生み出したものの多さです。

元々この時代、手紙は重要な通信手段で、多くの有名人が手紙を遺しています。
その中でも、シュリーマンは直筆の手紙を数多く出しているのです。

タイプライターは 18 世紀初頭には発明されていたようですから、著作の原稿執筆などには使っていた可能性もあります。

しかし、おそらくほとんどの文書作成は自らの手書きで行い、秘書などに口頭筆記させることもなかったようです。


“シュリーマンはその全生涯を通じてあらゆる文書を保管しておかねば気が済まなかった。
手紙、葉書、面会メモ、伝票、下書き、証書、賞状、名刺、新聞の切り抜き、証文、帳簿、 外国語の練習帳などすべてを保管していた。彼が書いたり受け取ったりした書簡は全部 で六万通に及び、自ら出した書簡の多くを、整然と傾斜した書体で用紙の上下左右 びっしりと埋め尽くして書き写している。たった一年で彼が出した書簡の数は一八OO通を 超えた。

彼の手書き文字を解読するのは、一世紀以上もたった今、薄い用紙がインクを 吸い込んで滲んでいることと、極端に倹約家であった彼が一枚の用紙に二連の書簡を 複写することが多かったせいで、なかなか簡単ではない。
日記は一八冊が現存しているが、旅行や発掘の時にのみ書いたもので、使われている
言語は一〇種に及び、それも彼が各国を移動するにつれて次々と切り替わり、アラビア語 からギリシア語、そしてドイツ語へ戻るという具合に、できる限り滞在している国の言語で 書いている。

これらの日記は几帳面かつ簡潔で、彼の性格、厳密さや正確さに対する こだわりについてしばしば多くの言葉を費やしている。どこにいようとも、うんざりするほどに 細々と寸法、統計、温度、見取り図などを記録した。シュリーマンはこれに加えて一二冊の 著書があり、そこには自伝的断章も含まれ、少なくとも二編の短い回想録を残していて、 その第一は一八六〇年代のアメリカ旅行日記に含まれ、二つ目は六〇歳の誕生日を前に して書かれたものだ。”
(『トロイアの秘宝』pp23-24)


“さらに二年の間に三五冊の帳面を練習で埋めた。こういう練習帳はそれぞれが数千頁の 合本にまとめられているが、文章を写す苦労の跡が残り、学生のノートのようにインクが 垂れたり線を引いて消したりしてあって、天気や植物分布や社会情勢などを精確に、時に は衒学的に記録した日記よりもずっと露骨にシュリーマンの性格が表れている。”
(『トロイアの秘宝』p73)

これだけの驚異的な文書の生産を行いながら、よく腱鞘炎になったりしなかったものだと思います。

彼は文字を書く時、商人らしく「立ち机」を使っていたそうです。

立ち机を使うと自然と姿勢がよくなり、また足の裏に適度の刺激を与えるので脳が活性化するとも言われています。

立ち机がよくわからない人は、ホテルの受付の人などが立って書いているところを想像してください。

またシュリーマンは、文字自体をきれいに書くことを望んだようです。

“最も重要なことは整った筆跡であると判断し、マニエという有名なベルギー人の書家に ついて習得した。”
(『トロイアの秘宝』p38)

“そのさい彼は筆記体などのために時間を失うことなく、はじめから印刷体の文字を使って いる。自分の勉強の成果を、いちはやく、未熟な青いままでも楽しむことのほうを好んだ からである。”
(『発掘者の生涯』p75)

ちなみにこの印刷体への言及は、ギリシア語についてのものです。
どの言語でも筆記体を使わなかったというわけではなく、これは言語によって異なっているようです。
おそらくドイツ語などのラテン文字を使う言語では筆記体も使ったことでしょう。

ともかく、立ち机と洋風の書道(カリグラフィー)によって、大量の書き物をこなすことができたようです。

しかし、なぜそもそも文字を書くことにこれだけ気を使ったのでしょうか。

彼は日本でいう中学・高校生の年齢の間、学校に通わず働いていました。
この間文字を書くことはほとんどなかったのかもしれません。
そのため、20 歳になっても子供っぽい幼稚な文字しか書けなかったのでしょう。

シュリーマンが外国語を学び始めた当時はまだ電話がなく、通信文や契約書など手紙が主体だったようです。
そうすると、文字をきれいに書くことは知的教養の高さを表しますし、そういう文書で何かを提案された方が幼稚な文字を見せられるよりも何倍も説得力があります。

元々は自分の仕事に役立てるために文字をきれいに書くようにしたわけですが、それが後々大量の文書を作成する際に役立ったのだと思います。

そして、外国語を覚えるのに「書くこと」を中心に据えたため、短期間で語学を習得することにも役立ったというわけです。
これは先に単語表のところで見てきたとおりです。

現代の私たちは、キーボードを多用し、自らの手で文章を書かなくなりつつあります。

しかし、手を動かして文字を書くことは非常に重要です。

私の取り扱っている英語教材でも、ノートにペンで文字を書くことを推奨しています。
元々、語学の練習過程を記録に残すことが目的のようです。
自分の答え、そして訂正を記録に残し、次のステップに役立てるためです。

しかし、何人かの学習者から、手を動かすことで感覚的な刺激が発生し、記憶の定着にも役立っているようだ、という報告をもらっています。

私は昔、そろばんを習わされていた時があります。
私自身はいかにサボるかに集中していたのですが、うまい子はどんどん成長していきました。

そろばんは上の級や段になると、暗算をやるのです。

見ていると、彼らは問題を聞きながら口や手を動かしているのです。
 特に手はそろばんの動きをしていて、どうやら頭の中でそろばんを動かしているようなのです。
脳の動きと手の動きが一致していて、どちらかが欠けると計算ができない、ということでした。

先のシュリーマンの暗算も、これと似たような感じがあったのかもしれません。

いずれにせよ、書くということ、そして手を動かすということは脳の機能と固く結びついているようです。