英語は難しくない!大人のための最短英語学習法

忙しい大人のための効率的な英語学習法について書いていきます。

シュリーマンはどうして多くの外国語を習得しようとしたのか?その動機は何なのか?

  シュリーマンの外国語習得法を語る上で、彼の学習に対する意欲を理解しておかなければなりません。

今まで見てきたように、彼の外国語習得法は常人が簡単にできる勉強法ではありません。

日本では、「聞くだけで」とか「知らないうちに」英語をマスターできる教材が溢れていますが、シュリーマンの外国語習得法はその対極に位置しています。

その代わりに継続さえできれば、「実務レベル」で使える外国語を、短期間で数多く習得できる、そして失敗する可能性も非常に低いやり方です。

しかし、短期間とはいえ、何をやり、どれだけ勉強するかが明確であり、その勉強量と学習時間は膨大なものになります。


“シュリーマンは明らかに生まれながらの言語学者であり、際限のない繰り返しも骨の折れ る猛勉強にも倦むことはなかった。”

(『トロイアの秘宝』p38)

言語学者がどういう仕事をしているのかわかりませんが、まさに再現のない統計と分類の繰り返しのように思われます。

今回のインターネットでの事前調査で、言語学者の中には数学的な統計手法やコンピュータのプログラミングに秀でた人が多いのに気がつきました。

シュリーマン自身は、ほぼ独学で語学を習得していったのですが、その手法は誰かに習ったものというわけではありません。

彼は事前に何度か語学学習を試みて、どうすれば最も短期間に成果を上げることができるかを考えていたのでしょう。
そして、常識を覆すやり方で、斬新な外国語習得法を開発したところが、生来の言語学者と言われる所以でしょう。

 

“大判でマーブル染の見返しのある帳簿のような練習帳は、どの頁もぎっしりと丹念に書き 付けられた外国語の単語で埋め尽くされ、彼の才能と驚くべき頑張りとを証明している。”

(『トロイアの秘宝』p38)

 

後述しますが、シュリーマンの語学学習法では「書くこと」が大きな要素になっていると思われます。

元々節約家ですので、ノートに書かれた文字も几帳面で小さかったようです。
日本でも、昔の寺子屋では1枚の紙が真っ黒くなるまで練習して、さらにその上に書いたと言います。
ですから、ノートを丁寧に使うのはそんなに驚くことではないのです。

しかし、シュリーマンの場合は、書いて練習した量が膨大だということに注目すべきです。

それにしても、なぜ、シュリーマンはそんなに熱心に外国語の習得に取り組んだのでしょうか。

彼にとって外国へ行くことは、苦しい惨めな生活から抜け出して、自分の人生を切り開くことと同義だったのかもしれません。

最初の仕事で身体を壊した後、ニューヨークへ移民しようとして、事情が許さずあきらめた経験があります。

その後、ハンブルクという13ヵ国語の新聞が飛び交うような国際都市で雑貨商勤めをします。
ハンブルクは国際的な企業の事務所が数多く置かれていたところで、商業も盛んで外国からの帆船も数多く停泊していました。

この都市での経験が、外国への憧れを助長し、多くの外国語を習得することから生まれる可能性に気づかせたのかもしれません。

そして、再び移民しようとコロンビアに行く船に乗り込みます。


“コロンビアのある商会が丈夫な若者を探しているというので、シュリーマンは二〇〇〇 海里もの船旅、そして多くの先人が命を落とした黄熱病の恐怖にも怖じけづくことなく、 大急ぎで志願した。十分な教育を受けなかったとはいえ、ドイツ語やフランス語、英語で 書かれた商業文の試験に合格する能力はあったのだ。”
(『トロイアの秘宝』p34)

この試験のレベルがどの程度かわかりませんが、既にあるレベルでフランス語、英語を使いこなせたことがわかります。また、この船の中でスペイン語の勉強をしていますから、本格的ではないにしろ、おそらくハンブルク時代には語学の勉強をはじめていた可能性があります。

ちなみにわざわざドイツ語の能力に触れているのは、シュリーマンが日本でいう中学・高校生時代に全く勉強していなかったからでしょう。
実際、シュリーマンは最初の国語としてドイツ語を正しく使えるように特別に勉強しており、その上で他の外国語に手をつけました。

さて、結局この船はすぐに遭難して、シュリーマンはオランダに流れ着くのです。

そしてドイツには帰らず、そのままオランダのF・C・クイン商会で事務員の職に就き、本格的に語学の勉強を開始するのです。


“「不断の勤勉」が彼の唯一の解決策だったから、彼は二二ポンドの年俸の半分を勉強に あてることにした。”

(『トロイアの秘宝』p38)

この「年俸の半分を勉強にあてる」というのは、今でいう自己投資です。

私は以前経営コンサルティングの会社に勤めていたことがあるのですが、そこでの仕事や個人的興味から、実業家を中心に多くの成功者の伝記を目にしてきました。

彼らに共通しているのは、この自己投資です。
中には借金をしてまで勉学にあてた人物もいるくらいです。

ユダヤの格言だったか忘れてしまったのですが、「最も偉大な宝は、耳と耳の間にある」というような言葉があります。

つまり、頭脳、知識、知恵こそが、人の持つ最大の財産だということです。

自己投資とは、この頭脳の資産価値を高める行為です。

ハンブルクで外国語の重要性に気づいたシュリーマンは、語学をマスターすることで自分の価値を高めようとしたのでしょう。

自分の目的を叶えるため、時間とお金を集中して一生懸命に頑張る。

これは私たちも大いに見習うべきところです。


“別の友人に対しては、何か特技がないかぎり、商売から身を引いてはいけないと忠告
している――《本でも読んでいれば、仕事にことかかないなどと思っていられるなら、それ はあなたのたいへんな思い違いです。本なんか、いやになるにきまっています……ここで 思い出したのですが、あなたはヴァイオリンをひかれましたね。万歳、万々歳ですよ、それ なら行けます。ただし音楽に情熱を傾けて、音楽会なんかにも出てひき、作曲し、夜昼 あげて練習しなければだめです。それかおできになるかどうか、まずあなたの胸にたずね てからにしてください!》”

(『発掘者の生涯』pp222-223)

ここで注目して欲しいのは、練習だけではなく、人前での演奏が必要で、さらに作曲まで要求している点です。

シュリーマンの外国語習得法は、朗読や作文など、常に本番に近い練習からスタートします。
多くの外国語習得法が、挨拶や自己紹介といった幼児的な会話練習に時間を費やすのと対照的です。

シュリーマンは何事も本番を想定して行動することで、より高い効果を短期間で獲得できると考えていたのかもしれません。

私たちも自分の目の前の目標を意識して、語学の学習に取り組むべきだと言えます。